The Sun also Rises.

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台湾復興航空機墜落事故に見えた台中関係

2015年2月4日に台湾で起きた復興航空機の墜落は目を疑うような事故でした。マンションすれすれを飛び高速道路上で90度に傾き左翼が高速道路を走るタクシーにぶつかりながら川に墜落した映像には戦慄しました。その後、台湾メディアが一斉に人口が密集する台北市内を避けて川に墜落させた機長を讃える報道が各紙一面を飾りました。台北市長柯文哲は機長に敬意を表し涙ぐむほどでした。機長は台湾南部の街の夜市で働く貧しい家庭の母親の息子だったとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じています。

 

もし日本で航空機墜落事故が起きたとしたら機長を讃えるような事態におそらくならず責任問題に終始するだろうと予測できるだけに、台湾のメディアと台北市長の対応には非常に驚きました。台湾メディアに驚いたと同時にウォール・ストリート・ジャーナル紙のTaiwan Crash Pilot Hailed As a Hero(台湾墜落機パイロット、英雄として賞賛される)の記事を読んでいて興味深いことが2点ありました。


ひとつは墜落現場の捜査に中国政府とフランス政府が加わるだろうとされていること。フランス政府が捜査に関与するのは墜落した機体がフランスの航空メーカーで製造されていたからです。日本のメディアでは墜落した機体がフランスのヴィオン・ドゥ・トランスポート・レジオナル(Avions de Transport Regional)社製というところを伏せられています。もうひとつは台湾政府の発表によれば多くの乗客が中国人であったので国際的な慣例にしたがって中国政府も捜査に加わることができるとウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じていたこと。

 

Aviation Safety Council Spokesman Thomas Wang said that, in line with international practice, Chinese investigators could join the investigation in Taiwan, as many of the passengers are Chinese nationals, but China hasn’t decided. Xinhua News Agency reported that Chinese President Xi Jinping has pledged to provide assistance in treating the injured passengers.


Mr. Wang added that six investigators from French air accident investigation bureau, the BEA, and the plane maker Avions de Transport Regional would join the probe Thursday in Taipei, and six others from Canada would arrive Friday.
 

航空安全委員会報道官トーマス・ワン氏によれば、多くの乗客が中国人ということもあるので国際慣例にしたがって中国政府が派遣する調査官は台湾の墜落機の捜査に加わることができるが、中国政府は決めかねている。新華社通信によれば習近平国家主席は負傷した乗客に医療援助を拠出すると発表した。

 

ワン氏はさらに付け加え、フランス事故調査局BEAから6人の調査官と機体メーカーであるアヴィオン・ドゥ・トランスポート・レジオナルが木曜の捜査に加わる。カナダからさらに6人の調査官が金曜日に現場に加わる。

 

 

中国政府はまだ最終決定はしていませんが、台湾政府は「国際慣例にしたがって」中国政府も捜査に加わることができるというジャブを繰り出し台湾の独立をこの機会に乗じて中国政府に認めさせようとする意図があるのが伺えました。中国政府も台湾の意図を理解し現在調査官を派遣するかどうかを決めかねているようです。おそらく台湾と中国の間にはすべての局面においてこのようなやりとりがあるのだろうと推察できます。もし仮に中国政府の調査官が捜査に加わったならば中国政府が台湾の独立を自ら認めてしまうことになります。台中関係の緊張感を復興航空機の事故から垣間見えました。

 

ついでにフランスとカナダの調査官が捜査に加わる理由は、フランスメーカーの機体だからフランス人調査官なのはわかりますが、カナダの調査官が加わる理由は技術協力をしているからでしょうか。カナダのモントリオールにはある航空機メーカーがあります。ともにフランス語圏でプロペラ機メーカー。何かありそうですね。