The Sun also Rises.

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ウクライナ問題に見るオバマの心中

世間の関心が中東の「イスラム国」に向いているのですが、もうひとつ大きな動きが東欧で起きつつあります。毎日新聞によると国連人権高等弁務官は昨年の4月以降の死者数が5086人になったと発表して、今もなお最悪のペースで死者数が増加している模様です。

 

そんな中でBloomberg Viewからオバマ政権ウクライナに武器供与を始める準備があるとのニュースが入ってきました。オバマ政権がシリアの反政府勢力に武器を供与したようにウクライナ政府に武器を供与するか検討中で、かなり大規模な戦争に発展するかもしれないと報じています。第二次大戦後初の欧州における戦争になるかもしれません。



オバマ政権の閣僚の多くがウクライナ武装論に傾きつつあり、武装論を支持するメンバーは主にケリー国務長官、バイデン副大統領、NATO欧州軍の最高司令官、フィリップ・ブリードラブ将軍、次期国防長官に指名されているアシュトン・カーターの4人。

 

現状ではオバマ大統領はウクライナの武器供与にはGOサインを出していないが、国務省の意向を代表するケリー国務長官は賛成の立場を明確に表している。ホワイトハウス、特に国家安全保障担当大統領補佐官のスーザン・ライスはこれに抵抗していて、ウクライナに武器供与することがロシアの行動がさらにエスカレートすることを憂慮している。ジョン・マッケイン上院外交委員長はこの現状を皮肉ってオバマ政権の面々と一緒にいるとYesマンになってしまうと漏らすほど。

 

共和党が民主党政権に嫌気が指すほど現在のオバマ政権は「戦争」へ傾いているようです。

 

ケリー国務長官やバイデン副大統領などウクライナ武装論を支持する側の論理は、ウクライナが自分の国の治安を保つために武器が必要で戦争目的ではなく外交努力を支持しているというもの。ケリーの武装論に見え隠れするのは、ロシア外相ラブロフと激しい外交戦をしてきてロシア側が妥協を示したらドイツ側が拒否したこともあり武装しかありえないと考えるようになっている様子。

 

ドイツのメルケル手法とフランスのオランド大統領は、ウクライナを武装させたらロシアが攻勢をかけて欧州で戦争が起きてしまうためウクライナ武装論に反対の立場をとっているのですが、米オバマ政権ウクライナ武装論を支持しています。欧州と米国の間のジレンマでどうするか決断を迫られているのがオバマ大統領。

 

 

Obama can’t have it both ways; he can either side with Germany and decide the risks of arming Ukraine are too great, or he can side with the majority of his national security team and Congress by moving forward with military aid if and when the current round of talks with Putin fails.

Not making a decision is a decision of its own. And the more the president delays, the more leverage Putin and the Ukrainian separatists will have to negotiate with, as they continue to press their military advantage on the ground.

オバマは両方に良い顔はできない。つまり求められていることは、ドイツの側に立ってウクライナを武装させることがリスクの高すぎることなのか、それとも安全保障チームと米国議会の側に立ってプーチンとの交渉に失敗した時に備えて武器供与をするめるのかという決断だ。

 

選択をしないのもまた選択のうちのひとつで、決断が遅れれば遅れるほどプーチンウクライナ分離独立派が交渉を優位に進め、地上に展開している軍隊を交渉の選択肢として使い続けることになる。

 

ハムレットの心境のオバマ大統領。シリアに武器供与して「イスラム国」というモンスターを生み出したようなことがウクライナにも起きてしまうのか。それとも第二次大戦後初の欧州での戦争を引き起こしてしまうのか。重い決断が迫られている。